土地と酒
今も昔も洋の東西を問わず、酒は人々の暮らしと密接に繋がってきました。
気候や地形、信仰、文化、歴史、農業、そして食習慣を通してとても密接に。
気候や地形がもたらす土地の個性。土地の個性が現れた農作物。
その農作物を原料として信仰や文化の中で造られてきた酒。
だとすれば、酒を造るための原料の性質はダイレクトにそこに暮らす人そして風景を反映すると言えるのではないでしょうか。
山田錦は酒米の最高峰です。
これまで約30年間、私たち松瀬酒造と竜王町酒米部会は竜王産山田錦を、その原産地である兵庫県の中でも「特A」と格付けされた地区並みの品質まで引き上げることを目標に取り組んできました。
収穫時期まで稲穂が倒伏しないように。
米粒一粒一粒が大きくなるように。
この土地での最適な栽培方法を探ってきたのです。
そのたゆまぬ努力の甲斐あって、ここ数年は特A地区に勝るとも劣らない品質の山田錦が収穫出来るようになりました。
兵庫県の特A地区の田圃は、おおむね谷あいの粘土質土壌に集中しています。
竜王町はというと、大まかには東西の山に囲まれた盆地ではありますが、その田圃があるのは平地、山裾、河川の側と様々。
さらに土壌的にも粘土、山土、砂や礫(レキ)、またそれらの混合土壌と多岐にわたります。
水や肥料の持ちが良い粘土質の土壌で育つ米は、ふくよかでたくましく。
水はけが良い砂礫混じりの山土の土壌で育つ米は、硬く繊細でシャープに。
その混合度合いによる土壌の特性が米の質に現れます。
「酒を造るための原料の性質はダイレクトにそこに暮らす人そして風景を反映する」
という信念のもと、『松の司 純米大吟醸 竜王山田錦』を通して、竜王町の多様な土壌、風景、村々の空気感、そして稲穂を育てる農家一人一人の個性を表現し伝えていくことを次なるステップとしました。
皆さまがここ竜王町へと思いを馳せ、それぞれの米に深く宿ったオリジン[Origin-出自・源]をその味わいの中に感じて頂けたらと…心から願っています。
アルコール分:16度
原料米:滋賀県竜王町産 山田錦(環境こだわり農産物認証)
栽培者:
精米歩合:50%
水分や肥料の持ちが良い粘土質土壌で育った山田錦は、生育ストレスが少なく、柔らかな重量感が特徴です。橋本地区はこの粘土質に川砂などが混ざることで、柔らかな味の膨らみがありながらも軽さを感じられるバランスの取れた酒質となりました。優しい密度感と伸びのある味わいをお楽しみ下さい。